これまでLGBTに関する研究を行い数々の論文を執筆してきた宝塚大学の日高庸晴教授が、26日にLGBTをはじめとしたセクシャルマイノリティの人たちを対象に性被害経験やアウティングについて調査を実施した結果を報告しました。
【1】LGBTは性被害経験を約38%が経験
Hidaka et al (2014)『Prevalence of Sexual Victimization and Correlates of Forced Sex in Japanese Men Who Have Sex with Men』によれば、ゲイセクシャル・バイセクシャル男性の性被害経験の割合は、「服を脱がされた」10.5%、「卑猥な言葉でからかわれる」6.8%、「性的な部分に触られる」16.7%、「性器を触ることを強要される」8.8%、「膣性交を強要される」2%、「オーラルを強要される」5.9%、「お尻を強要される」6.5%、「その他」38%という性被害が多い実態が明らかになりました。
2019年9月〜12月には、宝塚大の日高庸晴教授がライフネット生命保険の委託を受けて、10〜70代のLGBTをはじめとしたセクシャルマイノリティの人を対象に、インターネット上でレイプやセクハラといった性被害経験について調査を実施。10769人の回答が集まり、「性器や胸、尻など体に触られた」22.4%、「性的な言動でからかわれた」17.3%、「無理やりキスされた」11.5%をはじめとして、性被害経験がある人の割合はおよそ38%に上ることが明らかになりました。
マイノリティ別に見た場合に、MtF57%、FtM51.9%とトランスジェンダーが最多で、続いてレズビアン52.2%、女性のバイセクシャル47.3%、ゲイセクシャル32.3%、男性のバイセクシュアル31.9%と続きました。
日高庸晴教授は、「適切な支援を受けられず、被害が潜在化している恐れがある」「警察などの担当者による理解のない対応で傷つく当事者もいる」と課題を考察しています。
【2】アウティングは約25%が経験
加えて、日高庸晴教授はアウティング調査も実施。アウティング被害はおよそ25%に上ることが明らかになりました。マイノリティ別に見た場合には、FtM53.6%、MtF46.3%とトランスジェンダーが最も多く、レズビアン34.9%、ゲイセクシャル25.5%と続きました。
また、労働者8690人に行った調査では、「職場や学校で、性的少数者に対する差別的な発言を聞いた経験がある」という人が78.9%と多くを占めていました。このことを受け、日高庸晴教授は「カミングアウトしていない当事者にとって、生活が崩壊するのではないかと恐怖を感じる行為だ。最悪の場合は自死につながる」と話しています。
【3】まとめ
筆者はこれまでセクシャルマイノリティの人たちに取材を行ってきましたが、「レズビアンを公言していたら、レズビアンの人からいきなり性的なDMが送られてきた」「自分は異性愛者だけれど、同性愛者をカミングアウトしてきた人から相互で性的な見せ合いを求められた」などを耳にすることがあります。
異性愛者でシスジェンダーのマジョリティとされている人たちからの性被害だけでなく、彼らもセクシャルマイノリティの人から性被害を受けることがあったり、セクシャルマイノリティ間でも性被害が起きていたりすると考えられます。セクシャルマイノリティに限らず、一部の人が行っている行為と言えるでしょうけれど、性被害を相談することは多くカムアウトにつながる上、知見のある人に対応を求めるのが難しく、セクシャルマイノリティの性被害は公に出しにくいことでしょう。
警察への相談も、職場での業務も不自由なく生活できるようになるには、多様性を認める共にセクシャルマイノリティの人たちが相談し、的確なアドバイスや対応が得られる環境が大切ですね。
(Aoki Amy/ライター)
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