セクシャルマイノリティの人たちは多くカムアウトするか否かで悩む機会があります。決める方法はあるのでしょうか。賛成派と否定派の意見や環境によって考えてしまいがちな場面、職場で起こりやすい状況から検討していきましょう。相手が理解があるか、受け入れるキャパを持っている人かどうかも判断基準です。
【1】セクシャルマイノリティへの認知度
セクシャルマイノリティやLGBTという言葉は、近年さまざまな問題や運動などで一般にも広く知られるようになってきました。しかし当事者で無い限り、詳しく理解している人はあまり多くなく、LGBTに関して誤解している人や、間違った認識を持っている人も少なくないでしょう。
例えば、異性経験が無いからそうなるんだと思い込んでいたりとか、同性愛を性同一性障害と同じものだと思っていたりとか、見当違いな誤解もまだまだあります。また、身近に当事者がいない(もしくはいないと思い込んでいる)場合は、あくまで他人事であって、「どちらでもいい」という理解の示し方をしている人も。
マイノリティへの認知度や社会の理解が広まってきたからと言って、それが自分の周囲の人の理解に直結するかと言うと、やはりそれはまた違う問題なのです。
【2】カムアウトする? しない? そう決めた理由
カムアウトをするか否かは個人の自由です。ですが、中には迷っている人もいるのではないでしょうか。セクシャルマイノリティの中には、賛成派も否定派も存在します。
(1)カムアウトした人の理由
恋愛や将来について話す時など、何らかの理由があってカムアウトした人が多いのではないでしょうか。結婚や子供などの期待や心配をする親に対しての配慮など、ある程度の年齢でカムアウトを決断した人も多いでしょう。
もちろん「自分を偽りたくない」と自らの意思でカムアウトする人も今は少なくありません。が、ほとんどの人がカムアウト出来ずにいた期間を経験してきたと思います。
(2)カムアウトしない人の理由
家族や友人等の人間関係・社会的な立場など、カムアウトによるデメリットが圧倒的に大きい、と言うのが一番の理由だと思います。
ただしカムアウトしない以上は、死ぬまでカムアウトしない・絶対に言わない、と心に決めている人も少なくないのではないでしょうか。
「セクシャルマイノリティーの自分」と「ストレートの(フリをする)自分」の両方の自分を大切にしたいと思う人も中にはいるのです。
(3)一部の人にだけカムアウトする
家族や一部の友達にだけカムアウトしているという人もいます。カムアウトしていないが故の不便さや、嘘をつかなくてはいけない罪悪感など、小さな苦労が蓄積するストレスって結構大きいですよね。
ただ自分の知らないところで勝手にアウティングされてしまう危険性もあり、信頼できる人だけに限るか、「最悪バレても仕方ない」という覚悟がない限り、これも難しいかも知れません。
【3】LGBTがカムアウトで悩みがちな場面
賛成・否定それぞれ価値観がある中で、環境によってカムアウトをした方が良いか悩むことがあります。こんな場面は悩み“あるある”かもしれません。
(1)友人に打ち明けていいのかどうか
何年か前に私の友人から「今LGBTの人と付き合ってるんだけど、みんな(他の友人)に言ってもいいかな?」と相談されたことがあります。
私はそもそも気にすることでもないと思ったので、「いいんじゃない?」と気軽に返しましたが、友人は色んな人に話すということは少なくてもその中に偏見的な目を向ける人がいるかもと思ったらしく、悩んだとのことです。
結果、その数日後には他の友人にも話していましたが、周りはすんなりと受け入れていました。
(2)親へ打ち明けていいのかどうか
そして、もうひとつ相談されたのが親へなんと言うかについて。親世代は、もちろん人によると思いますが、少なからず若い層よりかは偏見が強い気がします。昔は、LGBTの存在が今より隠れたものだったからかもしれません。
ただ、受け入れる態勢のない人に、無理やり受け入れさせるのは難しい話かと思いますので、そこはそれこそ、「恋人がいる」と言うような物言いで十分だと感じます。
(3)好きな人へどう告白すべきか
告白の仕方はLINEや電話、直接話す……などいろいろあります。これはLGBTに限らず、すべての人が悩むことですね。
恋愛はどちらか一方が好きなだけでは成立しませんし、逆に両想いであれば年の差や人種問わずに成立するものです。
まずは、好きな相手へそれとなくアプローチするところから始めるのが共通のスタートラインではないでしょうか。
【4】理解ある人かどうか見極める方法
中には、「え、まじで無理」「え、キモイ」「どうやってそんなんになったの?」など、心ないことを言う人もいます。もし私が仮に言われたとしたらまずは共感しときます。そして、相手の気持ちを落ち着かせた後に、必要な相手であれば実は…と必要な説明をします。
よっぽど性格が悪くてどこでも嫌われているような人はそれでも批判してくると思いますし、批判してくるような相手に対してフォローしないというのも選択肢だと思います……。でも、そもそも相手を見極めて傷つくことを回避したいところですよね。理解してくれる相手か、どう見極めたら良いでしょうか。
(1)LGBTに関しての話をしたことがある人
一番大事なのはコミュニケーションです。人は共感し合いお互いを認識していきます。得に女性はそういう方が多い印象ですね。
普段の会話の中でLGBTというワードが出てきたらなんとなく「偏見ってある?」「興味ってある?」「実際に友達でいたらどう思う?」など探ることでいつの間にか「この人は大丈夫そうだな」と感じる瞬間がきます。
(2)その友達にLGBTの友達がいるかどうか
最近ではよく「LGBTの友達いるよ~」など聞くことが多くなりました。それはきっと勇気を出してカムアウトしているからだと思います。
ゲイバーの店員さんでも構いません。偏見がなく楽しいからそこに行くわけであって友達とは言わないかもしれませんが「知り合い」「面白い人がいる」など紹介されていてもOKです。多少の可能性ですが“偏見”がないように感じられるからです。
(3)その人の性格や言動を長期に渡り分析
友達なら長年付き合うことが多いですよね。時間を使って分析していくことも見極める1つの方法だと私は思います。
なかなか受け入れ難い性格だったり、普段からLGBTに対して偏見を持っているような発言をしていたりこれもコミュニケーションになるんですが、大事なことです。
【5】そもそもマイノリティ別に受け入れやすさが違う?
自分自身がLGBTということを隠しているという人も多いはずです。特に好きな人ができてしまったりするとそれは同性の友人であるという可能性もあるからです。LGBTの人は少なからず存在するので、一般的には珍しいと感じる人が多いです。
でも世界で数えるともっとたくさんの人がいて、同性婚をしているような人も中にはいると思います。そういった中でマジョリティ、つまり多数派の人たちになんと言えばいいか分からないという人もいます。
勇気を持って伝えたら衝撃を受けられた、なんていうこともあります。ですがこれも多くは伝え方の問題になります。
例えば「好きだから付き合って」という言い方をすれば同性から好かれてしまったと嫌な印象も受けることがあります。「実はLGBTで同性のことが好きなんだ」という「相談」から入って誠意を持って伝えることで相手も受け止めやすくなるのです。
【6】もし傷ついたら、どうすればいい?
もし信じて言っても相手が非難するようなことになれば嫌な気持ちになりますよね。そうなった場合はどうすれば良いでしょうか。
(1)恋愛対象でないならそのことを伝える
カムアウトしたものの、その人のことが恋愛対象でないならしっかりと伝えるようにしましょう。
友達という付き合いであればそれを維持し続けることが大切になります。
相手も心無いこと言ってしまうのは「もしかしたら自分のことが好きなのでは?」と警戒し、友人関係が壊れてしまったり、友人の“フリ”をされていた心持ちによるショックからなのです。
(2)一旦距離を取る
理解してもらおうとするのではなく、こういう事もあると前向きにとらえるようにしましょう。
実は多くの人がLGBTの存在を知っていたとしても「友達がまさか…」と相手は考えます。
嫌なことも言われてしまうので、一旦距離を置くことが大切になるのです。
(3)異性に相談をする
実は異性に相談がしやすいというのが特徴でもあります。傷ついたときに相談をするのは同性ではなく異性の方が良いです。
何故なら同性が好きということであれば、マジョリティに立つと男性との恋愛についてよくわかるのは異性だからです。よく同性の人に相談をしてしまいがちですが、ここは異性の人に相談をしてアドバイスを貰うといいでしょう。
もし、何らかのコミュニティに属しているなら、同じセクシャルマイノリティの人に相談しやすい場合もあるかもしれません。
【7】LGBTが職場でカムアウトする理由
LGBTをいきなりカムアウトされたと驚く職員は少なくありません。ですが、セクシャルマイノリティの人たちにも理由がありますよね。よくある動機を確認していきましょう。
(1)福利厚生を聞きたくて
LGBTの人の場合、現状は法律婚以外の方法で関係を結ぶため、福利厚生はどうなるのか気になってしまいますよね。
会社によっても対応が違うので聞いているという人も多いのではないでしょうか。聞くとなると必然と、自分のマイノリティを話す必要性が生じます。
(2)自分のことを知ってほしい
LGBTだということを知って欲しいという思いが強くなることがあります。同じ目標に向かって頑張ってきた同期、応援してくれた上司、慕ってくれている後輩に対し自分を偽っているようで、後ろめたさを感じてしまうこともあるでしょう。
ある種、友情にも近い深い感情があるからこそ、「自分を知ってほしい」「受け入れてほしい」と思ってしまいますよね。
(3)飲み会や何気ない会話が辛い!
飲み会や何気ない会話が辛いと思って打ち明ける人もいます。よく恋愛や結婚の話が話題に上がってきたり、場合によっては下世話な話に発展していくことがあります。
例えば性嫌悪があるからあまり聞きたくない、異性の恋愛相談はよくわからなくて困るといった感情が芽生えてしまうこともあるでしょう。そういうことが続くと、つい打ち明けたくもなるのではないでしょうか。
【8】職場でやめてくれという声も…その理由とは?
しかし、職場でいきなりカムアウトするのはやめてくれということもあります。話す側であることが多いセクシャルマイノリティの人たちにとって、理解しにくい感情かもしれません。理由としてよくあるものをご紹介します。
(1)プライベートなことを知りたくない
単純に知りたくなかったからというのがあるでしょう。あくまで仕事としての付き合いであってプライベートは別と考えている人はこういう事は別に言わなくてもいいのではないかと考えている人です。
仕事に向き合ってくれればなんでもよく、カムアウトされたからと過度に気を使う必要が生じるのを恐れたり、仕事をしにきているのになぜわざわざそんな話をするのかと不審に思ってしまうことがあります。
「プライベートに人間ではない」と割り切っている人ほど、デリケートでプライベートな話題を持ちかけられることを快く思わない傾向があります。
(2)抵抗が出るから
カムアウトをした人に今まで通りに接することができるかと言われたら難しくもなってしまいます。抵抗が出てしまうからそれなら知らないままの方がいいと思う人もいるでしょう。
仕事に大きな影響が出てしまうこともあるので、そういったことはやめてほしいという人もいるかもしれません。
(3)子供みたいだから
あくまで一人の大人として見てくれている人もいます。そういう理由があっても会社のルールには則るという人は、今までのルールを変えられそうで嫌に思ってしまうことも。業務上でカムアウトをするのだから、業務の進行上でカムアウトの必要性がある、改革を求められていると思うタイプです。
今まで、一人の人間として見てきたのにいきなり、「ゲイなんだ。ゲイの男として接してくれ!」「ゲイだから男ばっかのプロジェクトに入れないでくれ!」と荒らされてしまうのではないかという一種の恐怖もあるかもしれません。
【9】まとめ
カムアウトした事によって肩の荷が下りたと思う人もいれば、カムアウトした事によって今まで作り上げてきたものが壊れていくような気分になるという人もいます。カムアウトする事で自信を持てると感じる人もいれば、カムアウトしない事で堂々としていられると感じる人もいるのです。
家族にだけ伝える、プライベートだけで打ち明けたい、職場でもセクシャルマイノリティとして理解されたいなど、様々な価値観の人がいることでしょう。逆に、カムアウトされる側も様々な価値観によって思うところがあるかもしれません。ビジネス性の強い職場で、いきなりカムアウトするの、聞いている人たちからすると衝撃が走る内容になるかもしれません。
でも、自分の人生をどう生きるかは自分が決めること。どちらが正しいという事は無く、恋愛が自由であるのと同じで、カムアウトも自由であって欲しいと思っています。TPO等も考えて検討すると良いかもしれませんね。
(アラタ・ツバサ・MAGI/共著)
※レズビアンのライター・アラタとトランスジェンダーのツバサ・異性愛者でシスジェンダーのMAGIが各セクションを共同で作成しています。
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